COLUMNコラム

12

「全館空調」徹底解説! メリット・デメリット・費用から導入のポイントまで

近年の日本は夏の猛暑や冬の寒暖差が激しくなり、従来の「部屋ごとにエアコンを設置する方法」では快適性に限界を感じるケースが増えてきました。そこで注目されているのが、一つの空調システムで住宅全体を快適な温度・湿度に保つ「全館空調」です。

全館空調は、オーダーメイドハウスでの採用が特に増えている設備のひとつ。ハウスメーカーや工務店によってシステムが異なるため、「本当に電気代は安くなるの?」「メンテナンスが大変じゃない?」といった疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。

本記事では、オーダーメイドハウスを手がける当社の視点から、全館空調の基礎知識・メリットやデメリット・導入費用・よくある失敗例などを網羅的に解説します。
さらに、オーダーメイドハウスならではの間取りや断熱性能の工夫も交えながら、全館空調を導入する際に気を付けておきたいポイントを詳しくご紹介。最後まで読んでいただくことで、快適で省エネな住まいづくりに一歩近づけるはずです。

全館空調とは?基礎知識

「全館空調」は、名前の通り家全体を一括で空調管理するシステムを指します。
一般的な戸建て住宅の場合、各部屋に個別のエアコンを取り付けて夏は冷房、冬は暖房と使い分けるのが主流です。しかし、家の中にはどうしても冷暖房の届きにくい部屋や廊下、階段、脱衣所などが存在します。その結果、部屋間の温度差が激しくなり、ヒートショック(急激な温度変化による体への負担)のリスクが高まるなど、健康面でも課題がありました。

一方、全館空調では大容量の空調機器とダクトを用いて、家中に一定の温度と湿度を届ける仕組みを採用します。どの部屋にいても温度差を感じにくく、廊下や水まわりまでまんべんなく空調が行き渡るため、家全体を常に快適に保ちやすいのが特徴です。

一般的な仕組み・システム構成

全館空調システムの多くは、天井裏や壁裏に設置されたダクトを通して冷暖房された空気を各部屋へ送り込みます。フィルターや熱交換器を搭載した空調ユニットが中心にあり、そこから送り出される空気が家全体を循環。さらに24時間換気機能加湿・除湿を同時に行うタイプもあり、室内の空気を清潔に保ちながら快適性を高めます。

セントラル空調や床暖房との違い

セントラル空調は、オフィスビルなどで広く採用されている「中央集中型」の空調方式を指す場合が多いです。これを戸建て向けにカスタマイズされたものを「全館空調」と呼ぶケースが多いです。

床暖房は足元からの放射熱で暖房する仕組みです。全館空調と組み合わせることも可能ですが、床暖房単体では冷房機能がないため、夏の冷房は別途必要となります。

全館空調のメリット

ここからは全館空調のメリットをご紹介します。

温度ムラが少なく、健康面にも配慮

最大のメリットは、家のどこにいても温度差がほとんどないという点。冬場は脱衣所やトイレ、廊下などが極端に冷えることがなく、ヒートショック対策として有効です。夏場も寝室やキッチンだけ暑くなるといったことが軽減され、家族全員が同じ温度環境を保ちやすくなります。

快適な湿度・換気管理

全館空調システムの中には、換気システムと一体化しているものも多く、空気清浄フィルターが組み込まれていることも珍しくありません。花粉症やアレルギーをお持ちの方には特にメリットが大きく、外気を取り込む際にフィルターを通すことで、ホコリや花粉、PM2.5などをある程度カットできます。また、除湿や加湿を自動で調整してくれる機種なら、結露やカビの発生リスクも抑えられます。

結果的に省エネ・電気代削減になる可能性も

「冷暖房を24時間つけっぱなしにするなんて電気代が高そう…」と心配される方もいますが、家全体を適切な断熱施工と組み合わせることで、意外と電気代が抑えられるケースも多いです。個別エアコンを複数台フル稼働させるより、効率的に空調管理ができるため、住宅の断熱性能が高いほど電気代が安定するメリットがあります。

空気の清潔さ・健康面へのメリット

全館空調は24時間空調・換気を基本とするため、室内の空気がこもりにくく、ニオイやホコリが滞留しづらい環境が作りやすいのも特徴です。さらに、空気清浄フィルターが高性能な場合、ウイルスやアレルゲンの軽減が期待でき、アレルギーやぜんそくをお持ちのお子さまや高齢者がいるご家庭にも安心です。

室内がスッキリ、インテリア性も向上

部屋ごとにエアコンを設置する必要がないため、壁にエアコンの室内機が露出せず、インテリアがスッキリします。ハイサッシや大きな窓、こだわりの内装を採用しやすく、デザイン面を重視するオーダーメイドハウスとの相性も良いです。

全館空調のデメリット・注意点

一方で、全館空調にはデメリットや注意点もあります。

初期コストが高額になりやすい

家全体の空調システムを設置するため、初期費用はどうしても高めになります。新築時に導入する場合でも、工事内容や機種によっては200~300万円程度を見込む必要があります。さらに、既存住宅へのリフォームで導入する場合は、天井や壁を大きく開口してダクトを配管するため、費用が膨らむことが多いです。

ランニングコストが増えるリスク

24時間連続運転を前提としたシステムのため、設定温度や断熱性能次第では電気代が高くなる場合もあります。断熱が不十分な家に導入すると、外気との温度差を埋めるために常にフル稼働になり、ランニングコストが予想以上にかかってしまうケースがあるので注意が必要です。

メンテナンスの手間と費用

全館空調ではダクト内のホコリやフィルターの汚れが溜まりやすく、定期的なクリーニングが欠かせません。ユニット部分にアクセスしやすい設計ならまだしも、場所によっては専門業者に依頼しなければならないケースもあり、その際の費用や手間も見込んでおく必要があります。

故障時のリスクが大きい

システムが故障すると、家全体の空調が一度に止まってしまうのが難点です。エアコンが部屋ごとに独立していれば、他の部屋の冷暖房でしのぐことができますが、全館空調は一本化されているため、修理が完了するまで家の温熱環境を保ちにくくなります。

乾燥や結露などのトラブル

冬場に暖房を強くかけすぎると、室内が乾燥しやすくなる懸念があります。また、換気や除湿機能が不十分なシステムの場合、結露やカビがダクト内に生えやすいなどのトラブルも起こり得ます。選ぶ機種や日々の運用によっては、快適性に差が出る点に注意が必要です。

全館空調の費用・ランニングコスト

これまで、全館空調のメリット・デメリットをご紹介してきました。

では、実際に全館空調を導入する場合、どれくらいの費用がかかるものでしょうか?

初期費用の目安

  • 新築住宅(オーダーメイドハウスの場合)
    設計段階からダクトや空調ユニットのスペースを確保するため、200~300万円程度が一つの目安。高性能機種や断熱性能を高める施工を同時に行う場合は、さらに費用が上乗せされるケースがあります。
  • 既存住宅のリフォーム
    天井裏や壁内にダクトを通すなど、大掛かりな工事になるため、300万円以上かかる場合も。構造的に導入が難しい住宅もあるため、事前の現地調査が必須です。

ランニングコストや電気代の概算

全館空調は基本的に24時間運転を推奨されていますが、実際の電気代は家の断熱性能や設定温度、世帯人数によって大きく変動します。一般的には月に1~2万円程度の光熱費アップを見込む方もいらっしゃいますが、断熱性能を大幅に高めることで、結果として冷暖房効率が良くなり、思ったほど電気代が上がらない場合もあります。

メンテナンス費用

  • フィルター交換
    機種によってはフィルターを自分で水洗いできるものもありますが、年に1~2回は交換が必要なケースも。交換フィルター1枚あたり数千円~1万円程度が目安です。
  • ダクトクリーニング
    プロのクリーニング業者に依頼すると、1回あたり数万円~10万円程度になることも。長期的に使ううえで避けられないコストといえます。

補助金や省エネ住宅との連携

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のように高断熱・省エネ性能が認められた住宅の場合、自治体や国の補助金制度を活用できる可能性があります。全館空調自体への直接的な補助金は少ないものの、断熱性能の向上や高効率設備導入といった枠組みで支援を受けられるケースもあるため、詳しくはハウスメーカーや工務店に相談してみましょう。

全館空調の導入プロセス・流れ

1. 導入検討~比較検討フェーズ

  • 複数のメーカー・工務店に相談
    全館空調システムにはメーカーごとの特徴があり、住宅構造や予算に応じて最適解が異なります。最初から1社に絞り込むより、複数社に相談・見積もりを取り寄せることで比較・検討がスムーズになります。
  • 断熱性能の確認
    全館空調の効果を最大限引き出すためには、住宅全体の断熱性能が不可欠。省エネ住宅としてどの程度の断熱材や窓を採用するかによって、空調効率が大きく変わります。

2. プランニング・設計段階

  • ダクト経路の検討
    天井裏や壁内にダクトを通すため、メンテナンスしやすい配置を検討することが重要です。点検口の設置位置や、エアフローがスムーズに流れる間取りかどうかもポイントとなります。
  • 室外機の設置場所
    庭やバルコニーなどに室外機を置くケースが多いですが、排気や騒音への配慮、将来的な増設スペースも含めて検討します。

3. 施工~完成後の使い方レクチャー

  • 施工期間の目安
    新築の場合は建物本体の施工と並行して行うため、大きく工期が延びることは少ないものの、ダクト工事や機器の設置に一定の時間を要します。
  • 完成後のチェックポイント
    システム稼働時に異音やエアフローの不具合がないか、各部屋の温度に偏りがないかなどを施工担当者と共に確認しましょう。

4. メンテナンス・定期点検

  • フィルター掃除のタイミング
    メーカー推奨の頻度(例:1~2ヶ月に1回)を守ることで、ホコリや花粉の蓄積を防ぎます。
  • 年1回程度のプロ点検を推奨
    ダクトや熱交換器、換気ファンなど、ユーザー自身では点検しにくい箇所が多いため、定期点検の契約を検討することをおすすめします。

よくある失敗例・後悔ポイント

断熱性能とのバランスを見誤った

せっかく高性能の全館空調を導入しても、外気の影響を受けやすい家だと電気代や快適性の面で不満が出やすいです。断熱性が不十分だと、全館空調がフル稼働し続け、結果的に光熱費が膨らむ原因になります。

メンテナンスの手間を軽視した

フィルターやダクトの掃除を怠ってしまうと、カビやダニの発生源となり、空気が逆に不衛生になってしまうケースがあります。「設置したら終わり」ではなく、長期的に維持管理が必要な設備であることを認識しておきましょう。

部屋ごとの温度調整が思ったほど自由でない

全館空調は一括で温度管理を行うため、基本的には全体の温度設定が同じになります。部屋ごとに温度差をつけたい場合は、個別制御できるタイプや、部屋ごとのバルブ調整システムを採用する必要があります。

換気システムとの連動を十分考慮しなかった

24時間換気が適切に機能していないと、結露やカビのリスクが高まります。設計段階で換気計画(第1種換気・第3種換気など)の選択を誤ると、せっかくの全館空調のメリットを十分に活かせない場合があります。

全館空調に関するQ&A

Q1. 全館空調の電気代はどれくらい上がる?

A. 一般的には月々数千円~1万円程度のアップを見込む方が多いですが、断熱性能の高い家温度設定を控えめにするなど工夫次第で抑えられる場合があります。実際の数値は住まいの地域・家族構成・ライフスタイルによるので、複数の事例やシュミレーションを確認しましょう。

Q2. 今の家に後付けできる?

A. 後付けは可能ですが、壁や天井を大きく開口してダクトを通すため費用が高額になるケースが多いです。建物の構造上、導入できない場合もあるため、まずは業者による現地調査を受けることをおすすめします。

Q3. 全館空調の寿命は?

A. メーカーや使用環境にもよりますが、10~15年程度が一つの目安です。定期的にメンテナンスを行うことで、より長く快適に使える可能性が高まります。

Q4. 部屋の加湿・除湿機能はどうなる?

A. 加湿・除湿機能を内蔵した全館空調もありますが、機種によっては対応していない場合もあります。乾燥や結露対策を重視したい方は、事前に機種選定や加湿器の併用などを検討しましょう。

Q5. 部分的に空調をオフにできる?

A. システムや設計によっては、部屋ごとにダンパーを設置して温度調整を行える機種もあります。ただし、完全にオフにすると空気の循環に偏りが生じるため、湿度管理や空気清浄が不十分になる可能性があります。

まとめ

最後に、全館空調導入のポイントのおさらいです。

  1. メリット
    家全体を快適に保ち、健康面・省エネ面でも優位性が高い。インテリア性や空気の清浄度も高められる。
  2. デメリット
    初期導入費やメンテナンスコスト、断熱性が不足すると光熱費が増大するリスクがある。
  3. 導入時の注意点
    断熱性能とのバランス、メンテナンス計画、部屋ごとの温度設定がどの程度できるかをしっかり把握する。

全館空調は、家全体の断熱性能や気密性との相乗効果がとても大切です。オーダーメイドハウスを検討されている方なら、設計段階から「どこにダクトを通すのか」「どんな換気方式を採用するのか」を細部までカスタマイズできます。さらに、太陽光発電や蓄電池などを組み合わせれば、電気代の負担を軽減しながら、一年中快適な温熱環境をキープすることも可能です。

全館空調は導入費用も安くはなく、メンテナンスが必要な設備であるがゆえに、「導入したけれど後悔した…」という声があるのも事実です。しかし、住宅全体の断熱性能ご家族のライフスタイルにしっかり合わせることで、快適性・省エネ性・健康面を高い次元で実現できる、非常に魅力的な設備であることは間違いありません。

オーダーメイドハウスの強みは、お客様それぞれの要望や暮らし方に合わせて間取りや設備を自由に組み合わせられること。全館空調で一年中快適な住まいを作りたいとお考えの方は、ぜひ一度、当社にご相談いただき、理想の住空間をイメージしてみてください。きっと、より良い家づくりのヒントが見つかるはずです。

LATEST COLUMN

新着のコラム

PAGE TOP